タクシーへの不満が尽きない人について。
時計の針は22時をまわっていて、
最寄駅の「辻堂」を往復する
送迎バスはすでにおわっていた。その日、「湘南T-SITE」に来ていたのだが、
駅までは歩いて30分くらいかかるというので、
タクシーを呼んでもらうことにした。
「さっきタクシー手配したときは、
雨のせいで15分くらいかかっていました」
TSUTAYAのカウンターの店員さんが
そう教えてくれた。
ちなみに。店員さんはずっと屋内にいて
気づいてなかったのかもしれないが、
雨は、2時間くらいまえにやんでいた。
迎車をお願いしてから
5分ほど店内で時間をつぶして、
タクシーと待ち合わせている道路に出た。
そこはTSUTAYAの私有地のようなところで、
ひとけのない静かな道路だった。
と、そのとき。
ちょうど目の前で、
スーツを着た陽気なサラリーマン2名と、
女性1名がタクシーに乗り込み、
一台のタクシーが走り去った。「まさか」
しかし、待てど暮らせど、
タクシーがやってこない。
「まさか」
湘南T-SITEのまえの道路には
タクシーは走っていないので、
呼ばなければ来ないはず。
あの3人組が自分よりも
先にタクシーを呼んでいた?
いや。カウンターの店員さんは、
「さっき呼んだときは雨が降っていた」
と話していた。つまり、この2時間で
もっとも最近タクシーを呼んだのは
ぼくである可能性が高い。
しばらくして、1台のタクシーがやって来た。
後部座席のドアが開き、
運転手さんが「アサダさん?」と聞いてきた。
「いえ、ちがうのですが、
おそらく先ほどやってきたタクシーが、
わたしが呼んだタクシーで、
そちらにアサダさんが乗られていると思います」
「すいません!ちょっとお待ちください」
運転手さんは、無線でだれかと連絡をとりはじめた。
「おそらくその通りです。
こちらにお乗りいただけますか」
駅に向かうタクシーの中で
あれこれ考えていた。
タクシーの迎車は、
「◯◯さんですか?」と名前を呼んで確かめずに、
「お名前はなんでしょうか?」
と聞くルールにしたほうがいいと思う。
(すでにそうならば徹底したほうがいいと思う)
急いで帰りたくて、なおかつ
すこし酔っぱらっている数人組ならば、
「◯◯さんですか?」と聞かれたら、「そうです」と乗ってしまうのはしかたない。
こういった「タクシーへの不満」という話は、
多くの人が持っている「あるある」だと思う。
「道をぜんぜん知らない新人だった」
「ものすごくタバコ臭い」
「タバコ臭を消すためのファブリーズが臭い」
「真冬や真夏なのに[支払]でドアを開ける」
「眠りたいのにやけに話しかけてくる」
‥‥などなど。
なんでこんなに多くの人が
タクシーへの不満を持っているんだろうなぁ、
とウンウン考えていた。
ほとんどの運転手さんたちは、
心をつくしてくださっている。
それなのに、不満が多く出ている。
じゃあ、なんなんだ、と言えば、
タクシーの運転手たちが、
タクシーに乗ってきた経験が
あまりないんじゃないかしら、と思った。
つまり、自分がユーザーとして
タクシーをよく利用してきていれば、
いわゆる「消費者のキモチがわかる」ことで
もっといいサービスができるんじゃないか、と。
航空会社では、福利厚生の一環で、
(もちろん多くの条件はありますが)
社員は飛行機にタダで乗れる。おなじように、福利厚生ではなくとも、
「社員教育」という「投資」のくくりで、
タクシーの運転手さんたちも
「自社のタクシーはタダで乗り放題」
というふうにできないのかなぁ。
(たしかに。よしたに。)