読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

たしかに、よしたに。

あんな人やこんな人について、考えたことを書きます。すこしでも「たしかに」となりますように。(よしたにごろう)

勝って兜の緒を締める人について。

Rugby World Cup 2015
 
ラグビーについての戦術的な、
マニアックな批評をするつもりは
もうとうございません。
というより、できません。
 
それは、ぼくよりもずっと専門的に、
ラグビーの最先端を学んでいる人や、
スポーツの批評を職業とする人たちに
お任せしたいと思います。
 
ただ、まえの試合を観ていたら、
「“日本人のこころ”って、
 こういうことだよなぁ」って
5分くらい考えてしまったんです。
 
* * * 
 
「歴史的大金星」といわれた
ラグビー日本代表の南アフリカ戦。
この試合については、
「感動させてもらいました!」
のひとことに尽きます。
 
この試合ではなく、
つぎのスコットランド戦。
 
あれだけ勢いづいていたジャパンは、
スコットランドにも勝てる!」
と世間の注目を集めていただけに、
(民放視聴率15〜18%!)
点差をつけて負けてしまったことで
日本じゅうがため息に包まれました。
(いや、包まれてはいないですけど)
 
ここからが本題で、
「なんで負けたのか」ということ。
 
誰にも迷惑をかけないように、
妄想という名の分析をしてみました。
 
* * * 
 
読んだことありますでしょうか。
さいごのほうに「連合艦隊解散の辞」の一節で
東郷平八郎さんが、こう言うわけです。
 
神明は唯(ただ)平素の鍛錬に力め戦わずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足し治平に安んずる者より直に之を褫(うば)う。古人曰く勝って兜の緒を締めよと。
 
「ストールとマフラーはおなじっしょ!」
っていうくらいざっくり現代語訳すると、
 
ものすっごく鍛錬して
 戦うまえから勝ちを約束されたような人に、
 神様は勝利を与えるけど、
 一勝しただけで満足しちゃうヤツからは
 すぐにその栄冠を取り上げちゃうよ。
 勝ってもなお、兜の緒を締めましょや」
 
ということ(でお願いします)。
 
ちなみにこの訓言はアメリカの
ルーズベルト大統領も感銘を受けて、
全文を英訳させて全部隊に伝えたそうですね。
かたや、日本はこれを活かせずに
40年後に大敗北してしまうわけです。
 
でも、考えてみてください。
まだ20代くらいの男たちが
決死の思いで戦って金星をあげたら。
汗で蒸れて臭くて重たい兜なんて、
「ウェーイ」って放り投げて
冷たい川に飛び込みたいと思いませんか。
 
でも、ちがうんです。
 
兜を脱ぐどころか、
「まだ緒を締めよ」というんです。
 
‥‥いや、ふつう、できませんって。
「おれたちは強い!」と勇んでしまいます。
慢心してしまうと思うんです。
 
* * * 
 
あの試合で「象徴的だなぁ」と思った、
とあるワンシーンがあります。
 
ペナルティをもらって
ゴールキックで3点を狙う日本。
 
世界レベルのキック成功率をもつ
ジャパンの名キッカーならば、
決してむずかしいキックではなかった。
(‥‥という前提で進めます)
でも、惜しくもボールは
Hポールに当たってはねかえってきた。
 
この瞬間。
 
相手チームの選手(主将でキーマン)は、
北村晴男弁護士ばりの冷静沈着さで
そのボールをそのままキャッチし、
「Mark!」とフェアキャッチして、
あたりまえのようにハーフラインまで
キックを蹴って陣地を挽回した。
 
このときの、スコットランドの選手の
こころの内側を想像してみた。
 
「敵であるジャパンは、
 あの南アフリカに勝って確実に強い。
 決して慢心することなく、いやむしろ、
 本気で勝利をつかみにいかねば。
 だから、あらゆる可能性を考えておこう。
 このキックが入ったらこうしよう‥
 このキックが外れたらこうしよう‥
 このキックがもしはねかえってきたら‥」
 
一方で、ジャパンの選手(キッカー以外)は
どんなこころだっただろうか。
 
「この位置なら3点決まるはず。
 そうすれば4点差まで追いつける。
 それから1トライすれば逆転だ」
 
もちろん(強調です)、
「ぼくがあの場にいたジャパンの選手ならば」
という、まことに勝手な想像で、
こんなこと考えているようだから、
日本代表でもなんでもないワケです。
でも、1ミリくらい、ですよ。
数日前に、あの南アフリカに勝って、
世界中から賞賛されていたら、
そう思えるほどの「自信」はあると思うんです。
 
南アに勝ったことによる
日本ラグビー界の勢いを保つためなのか、
ネガティブな批評やコメントがあまりなかった。
 
「中3日の戦いでの疲労」
「主力エースの負傷による退場」
「出場メンバーの選出ミス」
 
‥‥いろいろ敗因は挙げられていたけれど、
「ジャパン、慢心してるやん!」という
おそらく、1つもなかった気がしています。
(あったらスイマセン)
 
「そういう批判ばっかしやがって!」
「ジャパンは頑張ってるじゃないか!」
ラグビーはいいところを称え合うんだ」
という、『批判への批判』をおそれて
なかなか書きにくいかもしれません。
 
でもでも。
 
「勝利」のために確実に3点を積んで、
情熱的かつ冷静に戦っていたスコットランドと、
おなじように3点を狙える位置でも、
7点を狙いにいった(もちろん果敢に)日本。
この両者で、ちがっていたものはなんだろう。
 
「自信」と「慢心」は、なにがちがうのか。
 
そのヒントを、私たちは歴史から学べる。
 
「古人曰く勝って兜の緒を締めよと。」
 
この精神は、日本人ならではだと思う。
「強くあろう」と、謙虚でありつづけることが、
「強い」ということなのかもしれません。
 
つぎのサモア戦(10/3)、
私たちの誇り・ジャパンは勝てると信じています。
南アフリカ戦で使った汗くさい兜をまたかぶり、
ギュっと緒を締めているはずですから。
 
 
たしかに、よしたに
 
 
 
【追記】
※「あのはねかえりのシーン、
 いろんなニュースでとりあげられてますよ」
 というご指摘をいただきました。笑
 調子にのってスイマセンでした。