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たしかに、よしたに。

あんな人やこんな人について、考えたことを書きます。すこしでも「たしかに」となりますように。(よしたにごろう)

「なんのために勝つのか」を考える人について。

 
 著者は、ラグビーW杯2015の
 日本代表でかつてはキャプテンも務めた
 
 実はこの本、2年前の暮れから
 廣瀬さんが書きはじめた内容だという。

 ラグビー日本代表の大躍進を受けて、
 どこかの出版社が「売れる!」と思って
 つくられた本ではないことは、
 本文を読んでいればよくわかる。

 「売れるかどうか」よりも、
 「伝えたいことがある」という切実さと、
 「伝えられるだろうか」という不安。
    そんな思いが伝わってくる。
 
 ワインのように時間をかけて
 熟成された言葉だからこそ、
 ひとつひとつの言葉がゆっくりと響く。
 そこに誠実な人柄が表れている。
 
 一流のチームによる、
 一流のていねいな仕事。
 五感がよろこぶ本。
 
 ひとりの読者として、
 そんな感想をもちました。
 
 
・この本の「はじめに」に、
 こんな一文がある。

 「正直に言えば、自分でもなぜキャプテンなんだろうと思うときがある。僕自身、キャプテンに向いていると思ったことはない。」(p13)

 高校・大学・社会人・日本代表でも
 キャプテンの座につくほどの人だから、
 もちろん謙遜もあるのだろう。

 ただ、誤解をおそれずに言えば、
 実際にご本人とお話した時の印象は、
 とびきりのカリスマ性で
 人を惹き付けるタイプではないと思った。
 
 廣瀬選手は、ラグビー選手としては
 恵まれたカラダではなかったけれど、
 「みずからを活かす」ことで
 トップレベルまでのぼりつめた人。
 「弱み」すら人にさらけだし、
 自分自身が傷つき、もがきながら、
 並々ならぬ情熱を胸に
 まわりのために動きつづけた人。

    個人的には、そんな印象をもっていた。
 
 ‥‥ そこで、ふと、
 ある人物が思い浮かんだ。
 人物というか、キャラクター。

 
 廣瀬さんって、
 だったのか。
 
 
 説明するのも野暮ですが、
 アンパンマンはお腹が空いている子に、
 (たいていカバ夫くん)
 みずからの顔を差し出す。
 ジャムおじさんに「助けて〜」と言う。
 でも、頭にあんこをつめて、
 また元気に飛び立っていく。
 とにかくやさしさと勇気がある。
 
 ‥‥ご本人に怒られるのは覚悟で、
 こんなふざけたことを考えていたら、
 この本のタイトルにある、
 
 
 「なんのために勝つのか」

 と

 「アンパンマンのテーマ」

 が、マーメイドジャパンのごとく、
 激しくシンクロした。
 (ビミョーに音も似ている)


 「なんのために勝つのか。なぜ、僕たちは勝たなくてはならないのか。それは、大義を実現するためである。」(p109)


 ♪
 なにが君の しあわせ
 なにをして よろこぶ
 わからないまま おわる
 そんなのは いやだ!
 (アンパンマンのテーマ曲)


 この歌詞にある「なに」の答えは、
 「大義」のことじゃないか‥‥?
 
 
 そんなことを思った。
 廣瀬さんは著書のなかで、
 みずから(日本代表)の大義を、
 「日本のラグビーファンを幸せにできる喜び」
 「新しい歴史を築いていく楽しさ」
 「憧れに存在になること」の3つとした。

 「闘う」ということを通じて、
 相手を打ち負かすことがしたいのか。
 自分が賢くエラいと思われたいのか。
 それが、自分のよろこびなのか。
 
 そんな命題を突きつける、
 廣瀬さんとアンパンマン‥‥
 
 私たちは、その問いに、
 すぐに答えられるだろうか。
 
 
・人は、だれしもなにかと闘っている。
 仕事、勉強、子育て、介護、病気‥‥
 壁を乗り越えようと必死に生きている。
 
 では、どうしてそれを乗り越えたいのか。
 その根本まで考えた先に、
 「大義」はあるのだと思う。
 
 「大義」は「使命」とも
 言えるのかもしれない。
 
 使命は、「命を使う」と書く。
 アンパンマンは、もろに命を使っている。
 だって、顔を差し出しているのだから。
 
 ウルトラマンみたいに大きくもないし、
 仮面ライダーみたいに変身もしない。
 特に必殺技もなく基本的にはパンチのみ。
 そして、決して敵を殺さないヒーロー‥‥
 (作者が「世の中にバイキンは必要」と考えているという理由もある)

 じゃあ、アンパンマンよ、
 君の大義はいったいなんだい?と問えば、

 「悪い敵をこらしめること」ではなく、
 「空腹を満たしてあげること」でもなく、
 「弱っている人を元気にすること」
 
 ‥‥と、答えるんじゃないかと思った。
 もちろん、正解はわからないけれど、
 大義ってそういうことじゃないかしら。
 
 
・お正月のテレビの特番やCMに、
 ラグビー選手が登場するようになった。
 彼らはまちがいなく国民のヒーローだ。

 テレビや雑誌を通じて思うのは、
 ラグビー選手という人たちは、
 「近いのに遠い存在」という感じがする。

 渋谷の居酒屋とかにふつうにいそう
 (汗かきながら)なのに、
 ひとたびグラウンドに立った彼らは、
 おなじ人間とは思えないような
 強靭なハートとカラダで闘っている。
 
 この「身近」と「遠い存在」の
 なんともいえないバランス。
 バタ子さんやジャムおじさん
 いつも自然にとけこんで暮らしている
 アンパンマンのような
 「等身大のヒーロー」は、
 これからのヒーロー像なのだと思う。

 
 「鉄腕アトム」や「ゴジラ」と
 コラボレーションしていたらしい。
 つぎ、アンパンマンはどうだろうか。
 もともと赤い服だから、
 白ラインを入れるだけで、
 あの桜のジャージになる(ムリか)。
 
 ジャパンとアンパンマン‥‥
 
 ジャパンマン!
 
 
 ‥‥おあとがよろしいようで‥‥。
 
 

・しょうもない妄想はさておき、
 『なんのために勝つのか。』
 通称・「  #なん勝つ 」。
 なにかと闘うすべての人に、
 ぜひ読んでほしい一冊です。
 
 
(たしかに、よしたに。)
 


*本についてのオマケ。
    なんというか、この本、
 本としての「佇まい」がいいのです。
 この本を実際に手にした人なら、
 共感してくれるかもしれません。
 
 装丁は、水戸部功氏。
 ぼくにとって、本屋に置いてあると、
 なぜかつい目が留まってしまい、
 かつ、その本ひとつひとつの性格が
 ちゃんと表れているなぁと思う装丁は、
 同氏によるものが多いです。
 
 写真は、桑島智輝氏。
 被写体がガタイのいいラグビー選手で、
 さらにその男が「漢」とくれば、
 ただならぬ雰囲気を醸しだすに
    決まっているのであります。