サンウルブズという人たちについて。
サンウルブズが「スーパーラグビー」で初勝利を飾った。
正午から会社の先輩の結婚式があり、おわってから外苑前にある秩父宮ラグビー場に駆けつけた。
席に着いたのは、後半10分頃。4点差で負けていた。が、まず会場の雰囲気のおどろいた。サンウルブズの開幕戦も観戦していたのだけれど、その時とは、まったくちがう。
まえに観たときは、会場にいた人たちがみんな、高校の入学式の日にクラスメイトと話すようなよそよそさがあった。きっと、運営側もファンも、初めてのスーパーラグビーとの付き合いかたが、いまいちわからなかったのだと思う。
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前回のチーターズ戦は<17-92>で敗戦。この数字だけをみると、「これが世界最高峰のラグビーリーグか‥‥」「なんだ日本代表って強いんじゃなかったの?」と肩を落としてしまっていたファンが多くいると思う。
でも、すこし考えてみると、「そんなことないよ」という見方もある。キーワードは「初参戦」と「アウェー」。
この試合は南アフリカのブルームフォンテーンで行われた。サンウルブズの公式SNSの発信をみると、おそらく試合の前日くらいに現地入りしている。
ウィキペディアによれば、このブルームフォンテーン、標高は1400m。これまたウィキペディアによれば、日本ラガーマンの聖地「菅平高原」とほぼ同じ標高である。
菅平で合宿をしたことのある人なら経験したことがあるかもしれないが、山の登ったその日は、酸素の薄さにカラダが慣れない。空気が薄いからか、やけにキックが飛ぶ。(ラガーマンはその話だけで仲よくなる)
ぼくは記者じゃないので事実を知らないけれど、もしも菅平と同じ標高の地に、前日入りしていたのだとしたら、高地でのトレーニングにカラダが慣れていなかった可能性はじゅうぶんにある。
しかも、そこは菅平とちがって、遠く離れた南アフリカ。きちんと日本食を摂れていたとは限らない。
つまり、もしここに書いた通りだとすれば、選手たちのコンディションは万全と言えなかっただろう。
そのあたりのマネジメントも含めて「チーム力」と言えばそれまでだけれど、やはり、そこは「初参戦」で「アウェー」。ハンディキャップは決して小さくなかったと思う。
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世界最高峰リーグに初参戦してからこれまでずっと連敗がつづき、「なぜ参入したのか」を問うメディアもあった。
選手たちの耳には世間の雑音が入り、先の見えない状況のなかで、どれほど苦しかっただろうか。私たち凡人には想像すらつかない。
それでも、ひさしぶりに我々の目の前に現れたサンウルブズは、まったく諦めていなかった。最後のノーサイドの瞬間まで攻めつづけていた。
ボクシングで言えば、12ラウンド目でもうフラフラなのにそれでも、勝利への執念でずっとファイティングポーズをとっているような状態だった。
そんな選手たちの背中を押すように、秩父宮ラグビー場は、たくさんのファンの声援であふれていた。みんな、「スーパーラグビーで日本が勝利する」という歴史的瞬間を待ち望んでいた。ぼくの隣に座っていたとある選手の家族は、「ここは富士急ハイランドか」と思うくらい絶叫していた。そして、サンウルブズは<38-26>で白星をあげた。
今年のスーパーラグビーが開幕後、「W杯で南アフリカを撃破した日本代表はどうしたんだ?」と思った「にわかファン」の方が多くいたんじゃないか。いや、「にわか」じゃなくても、「けしからん!」とスポーツ紙を叩きつけているオールドファンもいたと思う。
たしかに、サンウルブズは日本を代表する選手たちが集まっているから「日本代表」と言える。ただ、W杯とちがって国どうしの闘いではなく、ラグビー経験者ならだれもが「テレビの向こうの世界」だと思っていた、あの「スーパーラグビー」なのだ。
野球のWBCで侍ジャパンが優勝したからと、読売ジャイアンツが大リーグに参戦したようなモンなのだ。‥‥ン。「それはちがうぞ」という声が聞こえてきましたが、とにかく「すげえ奴らと闘っている」のである。
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もちろん、闘っているのは選手たちの生身のカラダ。その質量・動きが、試合の結果を左右しているだろう。けれど、天候や標高、土地やスタジアムの雰囲気、すべてのあらゆる環境が結果を支配しているんだな、と実感したような今日のジャガーズ戦だった。
昔に読んだ『強い者は生き残れない』(著・吉村仁/新潮選書)という本に、「強い者が生き残るのではなく、変わりつづける環境に適応した者が生き残る。その最も有効的な手段のひとつは他者と共存することである」というような内容が(うろ覚えです)書いてあった。
きっと、そうなのだ。「強い」とは、誰かを打ち負かすことではなく、勇気をもって弱き人たちの先頭に立って、変わり続ける環境のなかで、協力していけることなのだろう。それはつまり、多くの人に「愛されていること」なのだろう。
サンウルブズ。「強い」ぞ。これからが、もっと楽しみだ。
この日の勝利のニュースが日本じゅうに行き渡って、ひとりでも前向きになれる人が増えますように。
(たしかに、よしたに。)
こちらは秩父宮ラグビー場に来るまえの結婚式。
めでたい日でした。(会社の仲間たちと)